「シャルム、大広場がいい」
一触即発の状態の中、メルがこっそり父様に囁いた。
大広場というのは、おそらく王都の王宮前の広場の事だろう。
あそこは王宮前というだけあって、多くの貴族から市民までが行き来し、王宮からもその様子が見れる。
……実はこのラドキアという国は、他国に比べてそんなに大きくないし、国力がある訳でもないんだよね。
だからこの国の中では立派な王宮だけど、他の大国のように超巨大な宮殿があるというわけではない。
つまり、大広場での騒ぎは王宮にもすぐに届く程度の距離と規模なのだ。
しかも今日は建国記念のパーティー当日。
貴族が一か所に集まっている上に、王宮には諸外国の要人が来ている。
騒ぎを聞きつけた野次馬として、市民たちも集まってくるだろう。
「そうだな、陛下には契約を守ってもらわないとな」
父様はそう呟いたけど……契約って何の事だろう?
どうやら僕の知らない所で、陛下との間に何か契約があったようだけれど……。
「シエル、ヴァニス君、少し移動しよう。ちょっと厄介な事になるかもしれないけど……正当な理由でこの国から出ていく為にね」
「うん」
「分かりました」
僕たちの返事を聞くと、父様はメルに向き直る。
「メル、みんなは?」
「もう集まり出してるよー」
メルは空をちらりと見上げて、父様に答えた。
みんなって……まさか、精霊たち? 僕もメルのように空を見上げると、この国に居た精霊たちの気配を感じる。
少し様子を見た後、父様は僕たちに移動するように促し、王都の方向に向かって歩き出した。
「ふん、初めからそうやって大人しく従っていればいいもの……ごふっ!?」
すれ違いざまに父様が横から鋭い一撃をくらわせ、騎士団長は馬から落ちた。
体勢を崩して無様に転がった騎士団長に、ヴァニスは唾を吐きかけていく……やっぱり本当に、相当嫌ってるな。
それを見た騎士たちが僕たちに剣を向けたが、ヴァニスの秘剣によってあっさり敗れてしまった。
ヴァニスの秘剣は風の属性で、魔力を持った風を纏った剣の攻撃は、鉄だろうと大岩だろうと切り裂いてしまう。
いくら腕の経つ騎士だったとしても、剣を切り裂かれたんじゃどうにもできないだろうし、最悪の場合は鎧まで切り裂かれてぶつ切り状態にされるだろう。
さすがにヴァニスもそこまではしないけど、やろうと思えばやれるだけの実力を持っているのだ。
何か言いたげだが、関わったらヤバいと思っているだろう野次馬たちを横目に、僕たちは大広場を目指した。
大広場では、すでに騒ぎを聞きつけた市民でいっぱいになっていた。
当事者である僕たちが現れると、巻き込まれないようにと避けていく人々のおかげで、いつもの倍は歩きやすい。
そんな中、バカちん殿下が王宮から転がるように現れ、僕たちの背後からは公爵と騎士団長たちが追いかけてくる。
そしてバカちんの後ろには陛下と妃殿下、さらに後ろにはこの国の貴族連中や諸外国の来賓たちがこちらの様子を窺っており、野次馬の市民たちもつかず離れずで様子を見ている。
もちろん王宮の近衛兵をはじめ、警備の騎士や兵も所々に多くいるが、それでもこんな事態は異例の事だ。
これがよく言う、役者はそろった、というやつだろうか。
陛下の姿を確認した父様は、若干青くなっている陛下に向かって、満面の笑みで言った。
「陛下、契約違反です。子どもたちを連れて出ていきますね」
一触即発の状態の中、メルがこっそり父様に囁いた。
大広場というのは、おそらく王都の王宮前の広場の事だろう。
あそこは王宮前というだけあって、多くの貴族から市民までが行き来し、王宮からもその様子が見れる。
……実はこのラドキアという国は、他国に比べてそんなに大きくないし、国力がある訳でもないんだよね。
だからこの国の中では立派な王宮だけど、他の大国のように超巨大な宮殿があるというわけではない。
つまり、大広場での騒ぎは王宮にもすぐに届く程度の距離と規模なのだ。
しかも今日は建国記念のパーティー当日。
貴族が一か所に集まっている上に、王宮には諸外国の要人が来ている。
騒ぎを聞きつけた野次馬として、市民たちも集まってくるだろう。
「そうだな、陛下には契約を守ってもらわないとな」
父様はそう呟いたけど……契約って何の事だろう?
どうやら僕の知らない所で、陛下との間に何か契約があったようだけれど……。
「シエル、ヴァニス君、少し移動しよう。ちょっと厄介な事になるかもしれないけど……正当な理由でこの国から出ていく為にね」
「うん」
「分かりました」
僕たちの返事を聞くと、父様はメルに向き直る。
「メル、みんなは?」
「もう集まり出してるよー」
メルは空をちらりと見上げて、父様に答えた。
みんなって……まさか、精霊たち? 僕もメルのように空を見上げると、この国に居た精霊たちの気配を感じる。
少し様子を見た後、父様は僕たちに移動するように促し、王都の方向に向かって歩き出した。
「ふん、初めからそうやって大人しく従っていればいいもの……ごふっ!?」
すれ違いざまに父様が横から鋭い一撃をくらわせ、騎士団長は馬から落ちた。
体勢を崩して無様に転がった騎士団長に、ヴァニスは唾を吐きかけていく……やっぱり本当に、相当嫌ってるな。
それを見た騎士たちが僕たちに剣を向けたが、ヴァニスの秘剣によってあっさり敗れてしまった。
ヴァニスの秘剣は風の属性で、魔力を持った風を纏った剣の攻撃は、鉄だろうと大岩だろうと切り裂いてしまう。
いくら腕の経つ騎士だったとしても、剣を切り裂かれたんじゃどうにもできないだろうし、最悪の場合は鎧まで切り裂かれてぶつ切り状態にされるだろう。
さすがにヴァニスもそこまではしないけど、やろうと思えばやれるだけの実力を持っているのだ。
何か言いたげだが、関わったらヤバいと思っているだろう野次馬たちを横目に、僕たちは大広場を目指した。
大広場では、すでに騒ぎを聞きつけた市民でいっぱいになっていた。
当事者である僕たちが現れると、巻き込まれないようにと避けていく人々のおかげで、いつもの倍は歩きやすい。
そんな中、バカちん殿下が王宮から転がるように現れ、僕たちの背後からは公爵と騎士団長たちが追いかけてくる。
そしてバカちんの後ろには陛下と妃殿下、さらに後ろにはこの国の貴族連中や諸外国の来賓たちがこちらの様子を窺っており、野次馬の市民たちもつかず離れずで様子を見ている。
もちろん王宮の近衛兵をはじめ、警備の騎士や兵も所々に多くいるが、それでもこんな事態は異例の事だ。
これがよく言う、役者はそろった、というやつだろうか。
陛下の姿を確認した父様は、若干青くなっている陛下に向かって、満面の笑みで言った。
「陛下、契約違反です。子どもたちを連れて出ていきますね」
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