オルバートさんの指示が第五支部の騎士団まで回り、例の裏路地付近を中心に、秘密裏に厳戒態勢が引かれた。
表立って事を起こすと連中をおびき出せないから、できるだけ気づかれないように張り込みが行われている。
オルバートさんとクラニスさんは、向かいの古着屋さんの協力を得て、店舗内から張り込む。
父様とメルとディディさんは、反対側にある裏路地の入口の傍にあるカフェで、客を装っていた。
柴瑛君は忍の技術で気配を隠し、路地裏の横にある家の屋根の上から様子を見ている。
そして路地裏の周囲には、オルバートさんの部下である騎士たちが、それぞれ一定の距離を保って市民に扮している。
みんな完全に姿を隠していたり、市民と同化しているのは、さすがだ。
僕は守り人だから、仲間となった柴瑛君の魔力は分かるし、騎士たちもあの子の魔力が宿った魔道具を持っているから、それで位置が分かる。
だけどそれが無かったら、こんなにたくさんの人が居るエルカイムの都で、市民に扮した騎士たちの位置なんて分からないだろうな。
「動きはあったか?」
「ううん、まだ」
僕とヴァニスは宿に戻ったのだが、ここが三階という事と、ちょうど路地裏が見える方角に窓があったから、こうして様子を見ている。
熟練の冒険者である父様たちや、忍の訓練を受けていて禁忌にも対抗できる柴瑛君はともかく、僕とヴァニスはひよっこの冒険者で、魔法や秘剣も禁忌には通用しない。
下手に関わっても、かえって邪魔になってしまう可能性の方が高いから、こうして安全な場所で、ひよこのようにおとなしくピヨピヨしているしかないのだ。
だけど、状況によっては僕たちも役に立てるかもしれないから、いつでも出れるように準備はしてある。
……それにしても、張り込みって大変なんだな。
いつ現れるか分からない犯人を、ずっと待っているのは気が抜けないし、トイレに行ったり飲み物が欲しい時でも、場合によっては我慢しないといけないんだろう。
「……ん?」
そんな事を考えてたら、現場に動きがあった。
路地裏の近くで、やたら周囲を気にしている人が居る。
その人は数回辺りを見回して、逃げ込むように路地裏へ入っていったのだ。
「来たみたいだな」
「うん。……でも、騎士団はまだ動かないね」
「多分、監視をしつつ連中をもっと集めてから動くつもりだ。ほら、第六支部のほとんどが関わってるって話だけど、けっこうな人数だったから、出来るだけ多くを現行犯で捕まえたいんだと思う」
「あ、なるほど」
さすがヴァニスは騎士科の勉強をしていただけあって、こういう事は僕より詳しい。
「第六支部に隊長と副隊長っぽいのが居たけど、そいつらが来れば確実に動けるな。首謀者の可能性が高い奴を捕まえないと。末端だけじゃあんま意味ないから」
「その人たち、来るのかな?」
「……頭の回る奴なら来ない、そうでもないなら来るだろうな」
「え、どうして?」
「今、広場での計画が失敗してるし、一人捕まってるだろ? まだ騎士団が警戒を強めている時期でもある。ずる賢い奴なら、自分はアジトにしばらく姿を見せずに事件の関与も否定して無関係を装い、伝言なんかはいつ切ってもいい部下にやらせて、ほとぼりが冷めた頃に再度計画を実行する、とかだと思う。でも、あんなずさんなマッチポンプする奴が、そこまで考えてるとは思わないけど」
「ずさん……そうだよね、禁忌の魔力がなんの予兆もなく現れるなんておかしい事だし、封印した人を讃えるより、何か企んだんじゃないかって疑う人も多いと思う」
「ああ、騎士や竜王様だけでなく、察しのいい市民でもそう思うはずだ。大きな災害や事件が先に起きてたら、その影響だと思われる事もあるけどな」
僕とヴァニスが話している間に、怪しい人物はまた何度か現れ、合わせて五人が裏路地へ入っていった。
父様たちの居るカフェの方からも入ったなら、第六支部のほとんどは集まってるはずだ。
「計画が失敗、さらに捕まった奴が口を開くのも時間の問題だし、連中、焦ってるのかもな」
ヴァニスがそう言ったすぐ後に、僕らを馬鹿にした隊長っぽい人が、路地裏に入ったのが見えた。
すると、その様子を見ていた一番近くの騎士が、つかず離れずの絶妙な距離で尾行を始める。
その人に合わせて、柴瑛君も屋根伝いに動いていき、父様たちも席を立った。
それから少しの間の後、オルバートさんとクラニスさんも、古着屋さんを出て路地裏に入る。
そして、それを合図に大勢の騎士たちが通りに現れ、裏路地を封鎖した。
事情を知らない市民の人達は困惑気味だが……ついに、大捕り物が始まったのだ。
表立って事を起こすと連中をおびき出せないから、できるだけ気づかれないように張り込みが行われている。
オルバートさんとクラニスさんは、向かいの古着屋さんの協力を得て、店舗内から張り込む。
父様とメルとディディさんは、反対側にある裏路地の入口の傍にあるカフェで、客を装っていた。
柴瑛君は忍の技術で気配を隠し、路地裏の横にある家の屋根の上から様子を見ている。
そして路地裏の周囲には、オルバートさんの部下である騎士たちが、それぞれ一定の距離を保って市民に扮している。
みんな完全に姿を隠していたり、市民と同化しているのは、さすがだ。
僕は守り人だから、仲間となった柴瑛君の魔力は分かるし、騎士たちもあの子の魔力が宿った魔道具を持っているから、それで位置が分かる。
だけどそれが無かったら、こんなにたくさんの人が居るエルカイムの都で、市民に扮した騎士たちの位置なんて分からないだろうな。
「動きはあったか?」
「ううん、まだ」
僕とヴァニスは宿に戻ったのだが、ここが三階という事と、ちょうど路地裏が見える方角に窓があったから、こうして様子を見ている。
熟練の冒険者である父様たちや、忍の訓練を受けていて禁忌にも対抗できる柴瑛君はともかく、僕とヴァニスはひよっこの冒険者で、魔法や秘剣も禁忌には通用しない。
下手に関わっても、かえって邪魔になってしまう可能性の方が高いから、こうして安全な場所で、ひよこのようにおとなしくピヨピヨしているしかないのだ。
だけど、状況によっては僕たちも役に立てるかもしれないから、いつでも出れるように準備はしてある。
……それにしても、張り込みって大変なんだな。
いつ現れるか分からない犯人を、ずっと待っているのは気が抜けないし、トイレに行ったり飲み物が欲しい時でも、場合によっては我慢しないといけないんだろう。
「……ん?」
そんな事を考えてたら、現場に動きがあった。
路地裏の近くで、やたら周囲を気にしている人が居る。
その人は数回辺りを見回して、逃げ込むように路地裏へ入っていったのだ。
「来たみたいだな」
「うん。……でも、騎士団はまだ動かないね」
「多分、監視をしつつ連中をもっと集めてから動くつもりだ。ほら、第六支部のほとんどが関わってるって話だけど、けっこうな人数だったから、出来るだけ多くを現行犯で捕まえたいんだと思う」
「あ、なるほど」
さすがヴァニスは騎士科の勉強をしていただけあって、こういう事は僕より詳しい。
「第六支部に隊長と副隊長っぽいのが居たけど、そいつらが来れば確実に動けるな。首謀者の可能性が高い奴を捕まえないと。末端だけじゃあんま意味ないから」
「その人たち、来るのかな?」
「……頭の回る奴なら来ない、そうでもないなら来るだろうな」
「え、どうして?」
「今、広場での計画が失敗してるし、一人捕まってるだろ? まだ騎士団が警戒を強めている時期でもある。ずる賢い奴なら、自分はアジトにしばらく姿を見せずに事件の関与も否定して無関係を装い、伝言なんかはいつ切ってもいい部下にやらせて、ほとぼりが冷めた頃に再度計画を実行する、とかだと思う。でも、あんなずさんなマッチポンプする奴が、そこまで考えてるとは思わないけど」
「ずさん……そうだよね、禁忌の魔力がなんの予兆もなく現れるなんておかしい事だし、封印した人を讃えるより、何か企んだんじゃないかって疑う人も多いと思う」
「ああ、騎士や竜王様だけでなく、察しのいい市民でもそう思うはずだ。大きな災害や事件が先に起きてたら、その影響だと思われる事もあるけどな」
僕とヴァニスが話している間に、怪しい人物はまた何度か現れ、合わせて五人が裏路地へ入っていった。
父様たちの居るカフェの方からも入ったなら、第六支部のほとんどは集まってるはずだ。
「計画が失敗、さらに捕まった奴が口を開くのも時間の問題だし、連中、焦ってるのかもな」
ヴァニスがそう言ったすぐ後に、僕らを馬鹿にした隊長っぽい人が、路地裏に入ったのが見えた。
すると、その様子を見ていた一番近くの騎士が、つかず離れずの絶妙な距離で尾行を始める。
その人に合わせて、柴瑛君も屋根伝いに動いていき、父様たちも席を立った。
それから少しの間の後、オルバートさんとクラニスさんも、古着屋さんを出て路地裏に入る。
そして、それを合図に大勢の騎士たちが通りに現れ、裏路地を封鎖した。
事情を知らない市民の人達は困惑気味だが……ついに、大捕り物が始まったのだ。
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