「ヴァニス、そろそろ休憩したら?」
「ありがとな。でも、もう町が見えてきたから、このまま行くよ」
僕は頃合いを見て、魔動馬車を運転しているヴァニスに声をかける。
あのメルの暴走大回転事件以降、魔動馬車の運転はメル以外の三人で交代する事となった。
僕も初めて運転した時は緊張したけど、元々運転手をサポートする機能が充実してたから、思っていたよりスムーズに操縦できた。
運転手が操作するのは発進と停車、ハンドルを回してどのくらい右に行くか左に行くかを決め、夜になったら夜間モードにする。
上級者になれば、スピードを上げたりもっと高く浮いたりも出来るそうだけど、父様はともかく僕やヴァニスはまだそこまでの腕じゃないから、自動走行モードで安全に進んでいる。
そして先日アルビエルに入り、野宿を挟みながら街道を進み続けて、ついに例の町、サーズリンドが見えてきた。
町影はまだ少し遠いけれど、何時間もかけて到着するというほどの距離ではないだろう。
「サーズリンドって、どういう町なんだろう」
「今のところ、情報が筋肉しかないからな……」
相変わらずの楽しみと不安の入り混じった心境のまま、どんどん町が近づいてくる。
でも、切り立った山を背にしているというだけで、町自体は普通な感じ……ではなかった。
こちらからだと陰になっていたけれど、近づいてみると切り立った山の側面に、それはもう見事なマッスルボディの超巨大な石像が三体も彫られている。
うん、これは父様の気持ちも分かる。
僕もこの町について説明してほしいと言われたら、「筋肉」と答えるだろう。
ヴァニスも運転しながらポカンとしているし、きっと僕と同意見だ。
そして町の中自体も、あの石像に引けを取ならいくらいの濃さだった。
町の入口の手前で馬車を降り、近くで見るとさらに立派な濃さの石像に見守られながら、徒歩で町の中へと入る。
大通りを見ただけでも、町の外観どおりの立派なマッスル系の人が多く、通り沿いに並ぶお店もプロテイン専門店、筋トレグッズ専門店、トレーニング施設など、まさに筋肉尽くし……普通のお店、どこ?
時々見かける標準体型の人は筋肉フェチなのだろうか、うっとりした眼差しでマッチョマンたちを見つめている。
「先に宿をとっておこうか」
父様はそう言うけど、この筋肉街に普通の宿があるんだろうか。
宿自体はあるだろうけど、僕たちの知ってる宿とはかけ離れていそうで、ちょっと怖い。
「たしか、トレーニング施設付きの宿と、壁紙が筋肉の宿と、フリフリデザインの宿があったよねー」
メルの言葉を聞いて、普通の宿は無いんだな、と早々に諦めた。
しかも詳しく聞いたところ、トレーニング施設付きの宿はお風呂やベッドまでもが筋トレ用品で作られていて、まったく休まる気はしない。
壁紙が筋肉という宿は、施設内の至る所にマッスルボディの絵が貼られているらしく、こちらも視覚的に疲れそうだ。
フリフリデザインの宿というのは、リボンやレースなどの可愛らしい見た目の宿だそうだが、ここは恋人たちが大人のアレやコレをする為に使う宿らしい。
ちなみに父様は、以前訪れた時は壁紙が筋肉の宿に泊まったそうだが、筋肉に酔ったと言っている。
……うん、これもう、食材だけ早めに買っちゃって、町から出て馬車で寝たほうがいいんじゃないかな。
確かに、宿に比べたら馬車の方が手狭ではあるけれど、宿のほとんどががそんな状態だったら、逆に馬車の方がマシな気がする。
そう思って町の案内図を見ていると……。
「あれ、この町の宿、四つありますよ?」
「前に来た時は無かったね。新しくできたのかな」
話題に出なかった第四の宿を、地図を見ていたヴァニスが見つける。
父様の口ぶりから、どうやら最近できた新しい宿のようだ……内装や設備は未知ではあるけど。
この筋肉街では期待はできないが、もしかしたらという僅かすぎる希望と可能性を胸に、新しくできた宿へと向かう事となった。
「ありがとな。でも、もう町が見えてきたから、このまま行くよ」
僕は頃合いを見て、魔動馬車を運転しているヴァニスに声をかける。
あのメルの暴走大回転事件以降、魔動馬車の運転はメル以外の三人で交代する事となった。
僕も初めて運転した時は緊張したけど、元々運転手をサポートする機能が充実してたから、思っていたよりスムーズに操縦できた。
運転手が操作するのは発進と停車、ハンドルを回してどのくらい右に行くか左に行くかを決め、夜になったら夜間モードにする。
上級者になれば、スピードを上げたりもっと高く浮いたりも出来るそうだけど、父様はともかく僕やヴァニスはまだそこまでの腕じゃないから、自動走行モードで安全に進んでいる。
そして先日アルビエルに入り、野宿を挟みながら街道を進み続けて、ついに例の町、サーズリンドが見えてきた。
町影はまだ少し遠いけれど、何時間もかけて到着するというほどの距離ではないだろう。
「サーズリンドって、どういう町なんだろう」
「今のところ、情報が筋肉しかないからな……」
相変わらずの楽しみと不安の入り混じった心境のまま、どんどん町が近づいてくる。
でも、切り立った山を背にしているというだけで、町自体は普通な感じ……ではなかった。
こちらからだと陰になっていたけれど、近づいてみると切り立った山の側面に、それはもう見事なマッスルボディの超巨大な石像が三体も彫られている。
うん、これは父様の気持ちも分かる。
僕もこの町について説明してほしいと言われたら、「筋肉」と答えるだろう。
ヴァニスも運転しながらポカンとしているし、きっと僕と同意見だ。
そして町の中自体も、あの石像に引けを取ならいくらいの濃さだった。
町の入口の手前で馬車を降り、近くで見るとさらに立派な濃さの石像に見守られながら、徒歩で町の中へと入る。
大通りを見ただけでも、町の外観どおりの立派なマッスル系の人が多く、通り沿いに並ぶお店もプロテイン専門店、筋トレグッズ専門店、トレーニング施設など、まさに筋肉尽くし……普通のお店、どこ?
時々見かける標準体型の人は筋肉フェチなのだろうか、うっとりした眼差しでマッチョマンたちを見つめている。
「先に宿をとっておこうか」
父様はそう言うけど、この筋肉街に普通の宿があるんだろうか。
宿自体はあるだろうけど、僕たちの知ってる宿とはかけ離れていそうで、ちょっと怖い。
「たしか、トレーニング施設付きの宿と、壁紙が筋肉の宿と、フリフリデザインの宿があったよねー」
メルの言葉を聞いて、普通の宿は無いんだな、と早々に諦めた。
しかも詳しく聞いたところ、トレーニング施設付きの宿はお風呂やベッドまでもが筋トレ用品で作られていて、まったく休まる気はしない。
壁紙が筋肉という宿は、施設内の至る所にマッスルボディの絵が貼られているらしく、こちらも視覚的に疲れそうだ。
フリフリデザインの宿というのは、リボンやレースなどの可愛らしい見た目の宿だそうだが、ここは恋人たちが大人のアレやコレをする為に使う宿らしい。
ちなみに父様は、以前訪れた時は壁紙が筋肉の宿に泊まったそうだが、筋肉に酔ったと言っている。
……うん、これもう、食材だけ早めに買っちゃって、町から出て馬車で寝たほうがいいんじゃないかな。
確かに、宿に比べたら馬車の方が手狭ではあるけれど、宿のほとんどががそんな状態だったら、逆に馬車の方がマシな気がする。
そう思って町の案内図を見ていると……。
「あれ、この町の宿、四つありますよ?」
「前に来た時は無かったね。新しくできたのかな」
話題に出なかった第四の宿を、地図を見ていたヴァニスが見つける。
父様の口ぶりから、どうやら最近できた新しい宿のようだ……内装や設備は未知ではあるけど。
この筋肉街では期待はできないが、もしかしたらという僅かすぎる希望と可能性を胸に、新しくできた宿へと向かう事となった。
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