町の魔道具屋には、色々な魔道具がある。
そもそも魔道具というのは、道具に精霊の属性を宿してもらい、使う時に人間の魔力を注ぐことで動く道具の総称だ。
だから水の精霊の属性が宿った蛇口からは水が出るし、火の精霊の属性が宿ったコンロからは火が出る。
ちなみに魔動馬車や収納ポーチは、空間の属性を応用したものだそうだ。
僕たちのお目当ての魔動馬車は、カタログから選ぶ事になっている。
現物は本来の馬車から馬の分を引いたくらいの大きさだから、お店に一つ一つ並べるのは物理的に無理だろう。
しかし商品自体はすぐに売れるように、収納ポーチと同じ原理の商品ケースに入っているのだという。
「冒険者に一番人気、三十万ゴルだってよ」
「こっちは貴族御用達、一億ゴルなんてのがあるよ」
ヴァニスの見ていたカタログには、何も付いていない荷台状態の本体と標準設備のみの機能で、見た目もシンプルな馬車が載っていた。
後から不便と感じる可能性があるが、それでも安いもので十分という人や、あるいは自分でカスタマイズしたいという人にはいい商品だろう。
対して僕が持っていたカタログには、見た目からして煌びやかで、中は広く豪華なリビングと寝室、ウォークインクローゼットに大理石のバスルームとトイレ、中庭に書斎まで入っていて、さらには使用人やシェフ用のキッチンと作業室、控室に物置部屋までついて、その全ての部屋に空調設備が搭載という、やり過ぎ感さえ感じる逸品だ。
これだけの差がありながら外観は全く同じ大きさなのは、空間の属性の効果だろう。
この魔動馬車という商品は、見た目の大きさ自体は一緒でも、外装や中の広さ、入っている家具、設備の豪華さと機能の多さで値段が変わるもののようだ。
「無さすぎても困るけど、ありすぎるのもちょっと……ねえ?」
「ああ、ここまでやったら旅の情緒が無いよな」
一応元貴族と言えど僕たちは、上質な家具や服、美術品に囲まれ、執事や使用人が常に傍に居て、お茶も食事もお風呂も全部やってもらって……みたいな、貴族らしい生活をしていたわけじゃなかった。
だから正直に言うと、こんなにアレコレあってもきっと使わないだろうし、もっと普通でいい。
「ねーねー、二人とも、これとかどうー?」
父様と別のカタログを見ていたメルが、僕たちを呼んだ。
そこには「小人数用・オーソドックスタイプ 八十万ゴル」と書かれた馬車が載っていた。
カントリー調の色合いとデザインで、三段ベッド二つ付きの寝室、キッチン、シャワールーム、個室トイレ付と書かれている。
よく見ると屋根の上に仕切りが付いているから、上に物を置く事も出来るようだ。
「なんだか可愛いし、いいかも」
「三段ベッド、だと……!?」
必要そうな設備は揃っているし、見た目も内装も派手すぎず地味すぎずで、良さそうな商品だ。
ヴァニスも三段ベッドという響きに目を輝かせていた。
「よろしければ、現物をお出ししますよ」
目星をつけた僕たちに店員さんが声をかけてくれたから、せっかくなので見せてもらう事にした。
店の外の展示スペースで店員さんが商品ケースを取り出すと、魔力の霧と共に立派な馬車が現れる。
カタログで見たよりも柔らかい雰囲気はあるが、思っていたよりもガッシリとした作りだ。
さっそく中を確認させてもらうと、予想していたより快適そうだと判明した。
入口に入ってすぐの左手側には通路が続いており、正面には開放的なキッチン。
キッチンを横目に通路をそのまま進めば、右側の壁には個室のシャワールームとトイレのドアが仲良く並んでいる。
そこから少し感覚を空けて、突き当りの壁の右側には寝室へのドア。
寝室には三段ベッドが左右の窓側に備えられており、中央が通路になっている作りだった。
それ以上先には壁しかなかったから、中の部屋はここが最後という事だろう。
しかしここも狭さは感じず、ベッドは普通のシングルサイズだし、それぞれに外窓と内側のカーテン、収納棚や物を置くスペースがきちんと設けられている。
ヴァニスは夢の三段ベッドに興味津々だし、父様はキッチンやシャワールームなどの設備をチェック、メルは何故か先頭の運転席に鎮座していた。
「うん、よさそうだね。皆はどう?」
「いいと思う」
「一番上、いいっすか?」
「ふっふっふ、乗り回しちゃうよー」
僕は賛成であるが、ヴァニスとメルはもう買った気でいるような口ぶりだ。それも賛成って事でいいのかな?
外で待っていた店員さんに購入すると伝え、僕たちは今後とってもお世話になる魔動馬車を手に入れたのだった。
そもそも魔道具というのは、道具に精霊の属性を宿してもらい、使う時に人間の魔力を注ぐことで動く道具の総称だ。
だから水の精霊の属性が宿った蛇口からは水が出るし、火の精霊の属性が宿ったコンロからは火が出る。
ちなみに魔動馬車や収納ポーチは、空間の属性を応用したものだそうだ。
僕たちのお目当ての魔動馬車は、カタログから選ぶ事になっている。
現物は本来の馬車から馬の分を引いたくらいの大きさだから、お店に一つ一つ並べるのは物理的に無理だろう。
しかし商品自体はすぐに売れるように、収納ポーチと同じ原理の商品ケースに入っているのだという。
「冒険者に一番人気、三十万ゴルだってよ」
「こっちは貴族御用達、一億ゴルなんてのがあるよ」
ヴァニスの見ていたカタログには、何も付いていない荷台状態の本体と標準設備のみの機能で、見た目もシンプルな馬車が載っていた。
後から不便と感じる可能性があるが、それでも安いもので十分という人や、あるいは自分でカスタマイズしたいという人にはいい商品だろう。
対して僕が持っていたカタログには、見た目からして煌びやかで、中は広く豪華なリビングと寝室、ウォークインクローゼットに大理石のバスルームとトイレ、中庭に書斎まで入っていて、さらには使用人やシェフ用のキッチンと作業室、控室に物置部屋までついて、その全ての部屋に空調設備が搭載という、やり過ぎ感さえ感じる逸品だ。
これだけの差がありながら外観は全く同じ大きさなのは、空間の属性の効果だろう。
この魔動馬車という商品は、見た目の大きさ自体は一緒でも、外装や中の広さ、入っている家具、設備の豪華さと機能の多さで値段が変わるもののようだ。
「無さすぎても困るけど、ありすぎるのもちょっと……ねえ?」
「ああ、ここまでやったら旅の情緒が無いよな」
一応元貴族と言えど僕たちは、上質な家具や服、美術品に囲まれ、執事や使用人が常に傍に居て、お茶も食事もお風呂も全部やってもらって……みたいな、貴族らしい生活をしていたわけじゃなかった。
だから正直に言うと、こんなにアレコレあってもきっと使わないだろうし、もっと普通でいい。
「ねーねー、二人とも、これとかどうー?」
父様と別のカタログを見ていたメルが、僕たちを呼んだ。
そこには「小人数用・オーソドックスタイプ 八十万ゴル」と書かれた馬車が載っていた。
カントリー調の色合いとデザインで、三段ベッド二つ付きの寝室、キッチン、シャワールーム、個室トイレ付と書かれている。
よく見ると屋根の上に仕切りが付いているから、上に物を置く事も出来るようだ。
「なんだか可愛いし、いいかも」
「三段ベッド、だと……!?」
必要そうな設備は揃っているし、見た目も内装も派手すぎず地味すぎずで、良さそうな商品だ。
ヴァニスも三段ベッドという響きに目を輝かせていた。
「よろしければ、現物をお出ししますよ」
目星をつけた僕たちに店員さんが声をかけてくれたから、せっかくなので見せてもらう事にした。
店の外の展示スペースで店員さんが商品ケースを取り出すと、魔力の霧と共に立派な馬車が現れる。
カタログで見たよりも柔らかい雰囲気はあるが、思っていたよりもガッシリとした作りだ。
さっそく中を確認させてもらうと、予想していたより快適そうだと判明した。
入口に入ってすぐの左手側には通路が続いており、正面には開放的なキッチン。
キッチンを横目に通路をそのまま進めば、右側の壁には個室のシャワールームとトイレのドアが仲良く並んでいる。
そこから少し感覚を空けて、突き当りの壁の右側には寝室へのドア。
寝室には三段ベッドが左右の窓側に備えられており、中央が通路になっている作りだった。
それ以上先には壁しかなかったから、中の部屋はここが最後という事だろう。
しかしここも狭さは感じず、ベッドは普通のシングルサイズだし、それぞれに外窓と内側のカーテン、収納棚や物を置くスペースがきちんと設けられている。
ヴァニスは夢の三段ベッドに興味津々だし、父様はキッチンやシャワールームなどの設備をチェック、メルは何故か先頭の運転席に鎮座していた。
「うん、よさそうだね。皆はどう?」
「いいと思う」
「一番上、いいっすか?」
「ふっふっふ、乗り回しちゃうよー」
僕は賛成であるが、ヴァニスとメルはもう買った気でいるような口ぶりだ。それも賛成って事でいいのかな?
外で待っていた店員さんに購入すると伝え、僕たちは今後とってもお世話になる魔動馬車を手に入れたのだった。
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