「ふんぬー!!」
朝早くから通路を往復しながら走り込みをしているのは、昨日太った認定されたメルだ。
表情はかなり必死だが、走る音が「てしてしてし」なのは、やはりモフモフヒツジたる所以か。
メルは以前にもお菓子禁止令を出された事があるが、その時は運動せずに、半分いじけつつもお腹の虫を鳴かせているだけだった。
今回こんなに必死なのは、父様に「これ以上重くなったら、そのうち抱っこできなくなるよ」と言われたからだろう。
あの公爵邸の門を吹き飛ばせる父様にとっては、多少重くなったメルなんて軽々持てるとは思うけど……。
多分、メルの健康の為にわざとそう言ったんだろうな。
そんなメルを見ながら、次に作るクッキーの図案を考える。
メル型も可愛いけど、いろんな形を作るのも楽しそう。花型とか星型とか、動物や魚の形もいいよね。
「次の町に着いたら、さっそく冒険者登録に行くか?」
「そうだね、そういう事は早い方がいいよね」
ぼくの隣に座っていたヴァニスが、僕の書いた落書きのような図案を見ながらそう言った。
あの後、父様とディディさんに詳しく聞いたら、初心者は受けれる仕事が限られているのだという。
駆け出しのうちは町の近くでの素材集め、荷物運びやお弁当の配達に、農場や牧場の手伝い、子どもたちに読み書きを教えたり遊び相手になったりと、比較的に平和な感じの内容が多い。
逆に熟練の冒険者になれば、魔物退治や遺跡の調査、要人の護衛などの、危険だが報酬の高い仕事が受けられるようになる。
露店は初心者から出店することが出来るが、やはり違法な物の販売は禁止である事と、同じ町での出店は二日以上の間を空けてないといけないというルールがあるそうだ。
僕は最初はメルと一緒に、夜市の露店でクッキーを売る事にする。
ヴァニスは接客より力仕事の方が出来そうだからと、荷運びか農場の手伝いを探してみるつもりらしい。
そして、父様とディディさんは……。
「食える竜の討伐依頼があったら、久々にドラゴンステーキだな」
「あら、いいわね! ドラゴン肉って、タンパク質すごいのよね!」
運転席からすごい会話が聞こえるな。
ちなみに竜人族と魔物のドラゴンは似て非なる種族らしいので、食べても大丈夫……大丈夫なのか?
そもそもドラゴン肉ってのが、滅多に流通しない食材じゃなかったっけ。
そんな事を考えていたら、走り疲れたのか息を切らしたメルが、ぽてぽてと水を飲みに来た。
「メルはドラゴン肉って、食べた事ある?」
「シエル……ボクがヒツジだって事、忘れてないー?」
「あ、そっか、ヒツジは草食……メルって草食だったっけ?」
「雑食だよー、精霊だし」
「精霊は雑食なのか?」
「ボクみたいに人と長く暮らしてる子は、なんでも食べるよー」
「そうなんだ。じゃあ、食べた事ある?」
「ドラゴン肉より、クラーケンの刺身の方が好きー」
「あるんだ……ってか、クラーケンも食べたんだ」
「結局どんな味なんだよ」
「なんか、牛肉と馬肉と鶏の皮を足して割ったような感じ? クラーケンは旨味のヤバいイカ」
メルは僕とヴァニスの質問に、水を飲みつつ答えたが……ドラゴン肉の事を聞こうと思ったら、クラーケンの事まで出てくるという、まさかの新事実。
ドラゴンの味はいまいち想像が出来ないが、クラーケンはヤバいレベルで美味しいのか。
そんな話をしているうちに町が見えてきたので、僕たちは降りる準備をした。
フォルフロナの町は商業が盛んなようで、いろんな専門店が並び、行商の姿も多い。
さっそくギルドに向かい、受付のお兄さんに登録をお願いする。
筆記や実技の試験とかの難しい事があるのかと思ったけど、個人の能力を鑑定する魔道具に手を触れるだけで登録は完了となる。
ちなみに、もし指名手配犯だったり前科があったりする場合は、この時点で逮捕あるいは一旦保留で、調査結果次第で登録の合否が決まるそうだ。
もちろん僕たちには問題は無いから、そのまま登録となる。
魔道具で読み込んだ情報が個人のカードにそのまま反映されて、あとはカードを持っているだけで腕が上がったとか魔法を覚えた、などの情報を自動的に更新してくれるらしい。とても便利。
僕とヴァニスのカードは、初心者の緑色。
慣れてきたら青、さらに腕を上げたら黄色、赤、紫の順で色が変わっていくのだそうだ。
ちなみに父様とディディさんのカードは、最高ランクの黒だった。かっこいい。
仕事の方も色で分けられていて、自分のカードと同じ色か、それより前のランクの色の仕事を受けられるが、先の色の仕事は受けることが出来ない、というシステムになっている。
僕は明日の夜市での露店を選び、ヴァニスは小麦袋を運ぶ手伝いを選んだ。
そしてその横で、父様とディディさんは。
「んー、ドラゴンゾンビか」
「腐った肉はイヤよ、臭いもきつそうだし」
ドラゴン肉を食べる気満々だったところを、見事に挫かれてしまったようだ。
朝早くから通路を往復しながら走り込みをしているのは、昨日太った認定されたメルだ。
表情はかなり必死だが、走る音が「てしてしてし」なのは、やはりモフモフヒツジたる所以か。
メルは以前にもお菓子禁止令を出された事があるが、その時は運動せずに、半分いじけつつもお腹の虫を鳴かせているだけだった。
今回こんなに必死なのは、父様に「これ以上重くなったら、そのうち抱っこできなくなるよ」と言われたからだろう。
あの公爵邸の門を吹き飛ばせる父様にとっては、多少重くなったメルなんて軽々持てるとは思うけど……。
多分、メルの健康の為にわざとそう言ったんだろうな。
そんなメルを見ながら、次に作るクッキーの図案を考える。
メル型も可愛いけど、いろんな形を作るのも楽しそう。花型とか星型とか、動物や魚の形もいいよね。
「次の町に着いたら、さっそく冒険者登録に行くか?」
「そうだね、そういう事は早い方がいいよね」
ぼくの隣に座っていたヴァニスが、僕の書いた落書きのような図案を見ながらそう言った。
あの後、父様とディディさんに詳しく聞いたら、初心者は受けれる仕事が限られているのだという。
駆け出しのうちは町の近くでの素材集め、荷物運びやお弁当の配達に、農場や牧場の手伝い、子どもたちに読み書きを教えたり遊び相手になったりと、比較的に平和な感じの内容が多い。
逆に熟練の冒険者になれば、魔物退治や遺跡の調査、要人の護衛などの、危険だが報酬の高い仕事が受けられるようになる。
露店は初心者から出店することが出来るが、やはり違法な物の販売は禁止である事と、同じ町での出店は二日以上の間を空けてないといけないというルールがあるそうだ。
僕は最初はメルと一緒に、夜市の露店でクッキーを売る事にする。
ヴァニスは接客より力仕事の方が出来そうだからと、荷運びか農場の手伝いを探してみるつもりらしい。
そして、父様とディディさんは……。
「食える竜の討伐依頼があったら、久々にドラゴンステーキだな」
「あら、いいわね! ドラゴン肉って、タンパク質すごいのよね!」
運転席からすごい会話が聞こえるな。
ちなみに竜人族と魔物のドラゴンは似て非なる種族らしいので、食べても大丈夫……大丈夫なのか?
そもそもドラゴン肉ってのが、滅多に流通しない食材じゃなかったっけ。
そんな事を考えていたら、走り疲れたのか息を切らしたメルが、ぽてぽてと水を飲みに来た。
「メルはドラゴン肉って、食べた事ある?」
「シエル……ボクがヒツジだって事、忘れてないー?」
「あ、そっか、ヒツジは草食……メルって草食だったっけ?」
「雑食だよー、精霊だし」
「精霊は雑食なのか?」
「ボクみたいに人と長く暮らしてる子は、なんでも食べるよー」
「そうなんだ。じゃあ、食べた事ある?」
「ドラゴン肉より、クラーケンの刺身の方が好きー」
「あるんだ……ってか、クラーケンも食べたんだ」
「結局どんな味なんだよ」
「なんか、牛肉と馬肉と鶏の皮を足して割ったような感じ? クラーケンは旨味のヤバいイカ」
メルは僕とヴァニスの質問に、水を飲みつつ答えたが……ドラゴン肉の事を聞こうと思ったら、クラーケンの事まで出てくるという、まさかの新事実。
ドラゴンの味はいまいち想像が出来ないが、クラーケンはヤバいレベルで美味しいのか。
そんな話をしているうちに町が見えてきたので、僕たちは降りる準備をした。
フォルフロナの町は商業が盛んなようで、いろんな専門店が並び、行商の姿も多い。
さっそくギルドに向かい、受付のお兄さんに登録をお願いする。
筆記や実技の試験とかの難しい事があるのかと思ったけど、個人の能力を鑑定する魔道具に手を触れるだけで登録は完了となる。
ちなみに、もし指名手配犯だったり前科があったりする場合は、この時点で逮捕あるいは一旦保留で、調査結果次第で登録の合否が決まるそうだ。
もちろん僕たちには問題は無いから、そのまま登録となる。
魔道具で読み込んだ情報が個人のカードにそのまま反映されて、あとはカードを持っているだけで腕が上がったとか魔法を覚えた、などの情報を自動的に更新してくれるらしい。とても便利。
僕とヴァニスのカードは、初心者の緑色。
慣れてきたら青、さらに腕を上げたら黄色、赤、紫の順で色が変わっていくのだそうだ。
ちなみに父様とディディさんのカードは、最高ランクの黒だった。かっこいい。
仕事の方も色で分けられていて、自分のカードと同じ色か、それより前のランクの色の仕事を受けられるが、先の色の仕事は受けることが出来ない、というシステムになっている。
僕は明日の夜市での露店を選び、ヴァニスは小麦袋を運ぶ手伝いを選んだ。
そしてその横で、父様とディディさんは。
「んー、ドラゴンゾンビか」
「腐った肉はイヤよ、臭いもきつそうだし」
ドラゴン肉を食べる気満々だったところを、見事に挫かれてしまったようだ。
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