「……はぁあ~……」
一夜明けて、今日は晴天の気持ちのいい日。
皆は予定通り買い出しに行って、メルちゃんはアタシとお留守番しているところ。
エルカイムの騒動は予想外ではあったけど、一応は片付いた……それはそれでよしとしましょう。
それとは別に、アタシはアタシで問題を抱えているの。
「もう少し早かったら……いやそれでも微妙よね」
「何歳からでも恋は始められる」、なんて誰かが言ったわ。
以前のアタシなら、素敵な考えだと人ごとのように思ってた。
でも実際、自分の身にそれが起こるとなれば、話は別なわけよ。
あれこれ考えても現実的じゃないし、想いを伝えるハードルは格段に上がってるわ……結局は、理想でしかないのよね。
アタシは立派な子どもたちが居る、シャルムちゃんより年上なのよ?
だけどあの子は、その子どもたちよりも年下なわけで。
年齢差を気にするな、なんていう人もいるけど、親子くらい離れてたら、さすがに気にするわよ。
「はぁ……」
何度目かの溜息が、風に乗って消えていく。
アタシは暇さえあれば、あの子の事ばかり考えるようになっちゃったわ。
東の国の人を思わせる幼げな顔立ちに、くりくりの青い目、ちょっと癖のある髪もチャーミングよね。
不幸な境遇であるにもかかわらず素直で真面目な子、それに笑うとすごく可愛いの。
でも、アタシみたいなこんなオジサンじゃねぇ……。
あの子だって、同じ年頃の相手の方が良いに決まってる。
相手の幸せを考えるなら、アタシの気持ちには永遠に蓋をしたままの方がいいわ。
守り人の村まで一緒に旅をするんだもの、変に気まずくなって、みんなにも気を遣わせるくらいなら……。
「なーに黄昏てんのさー」
「……あら、メルちゃん」
メルちゃんはアタシの隣にモフっと座った……相変わらずのフワフワね、昨日のブラッシングのおかげかしら。
「ディディ、いい事教えてあげよっか」
「なに?」
「精霊は基本、人間に恋はしないんだよ」
「……知ってるわよ」
「でも、一度恋をしたら、絶対に浮気しない。還るまでその人の事だけを想い続けるよ。だから、たとえ自分の子どもであっても、愛情を注がないわけ」
「……メルちゃん、何が言いたいの?」
「半分でも精霊なら、振り向かせちゃえば一途だって事さー」
「……振り向いてすらくれないかもしれないのよ?」
「まー、今みたいに自分から背中向けてるんじゃ、永遠に無理だろうねー。いっそボクみたいに、好きな人に飛びついちゃえばいいのに」
「それはモフモフヒツジのメルちゃんだから、許されてるんでしょ?」
「嫌がる人もいるよー。でも好きな人に変に意地張るくらいなら、くっついた方が幸せだもん」
メルちゃんはそう言って、ぽふんと音を立てて椅子から降り、玄関のほうに歩いていく……買い出しに行っていたみんなが戻ってきたみたいね。
そして有言実行、メルちゃんは扉を開けたシャルムちゃんに飛びついて、ガッツリと甘えているわ。
恋愛とは違う感情だろうけど、シャルムちゃんにとってもメルちゃんは可愛い子なんでしょうね。
その様子を慣れたように見ているシエルちゃんとヴァニスちゃん、あの子たちの事は優しく見守ってあげたいわ。
……そして、その向こうにいる、あの子。
アタシが本当にメルちゃんみたいに飛びついたら、あの子を潰しちゃいそうだわ。
逆に飛びついて来てくれるのなら、いくらでも受け止める自信はあるけどねぇ……。
でも……そうね、確かに変に背中を向け続けるのはよくないわ。
……もしもいつか振り向いてくれた時に見たものが、アタシの背中じゃ寂しいものね。
一夜明けて、今日は晴天の気持ちのいい日。
皆は予定通り買い出しに行って、メルちゃんはアタシとお留守番しているところ。
エルカイムの騒動は予想外ではあったけど、一応は片付いた……それはそれでよしとしましょう。
それとは別に、アタシはアタシで問題を抱えているの。
「もう少し早かったら……いやそれでも微妙よね」
「何歳からでも恋は始められる」、なんて誰かが言ったわ。
以前のアタシなら、素敵な考えだと人ごとのように思ってた。
でも実際、自分の身にそれが起こるとなれば、話は別なわけよ。
あれこれ考えても現実的じゃないし、想いを伝えるハードルは格段に上がってるわ……結局は、理想でしかないのよね。
アタシは立派な子どもたちが居る、シャルムちゃんより年上なのよ?
だけどあの子は、その子どもたちよりも年下なわけで。
年齢差を気にするな、なんていう人もいるけど、親子くらい離れてたら、さすがに気にするわよ。
「はぁ……」
何度目かの溜息が、風に乗って消えていく。
アタシは暇さえあれば、あの子の事ばかり考えるようになっちゃったわ。
東の国の人を思わせる幼げな顔立ちに、くりくりの青い目、ちょっと癖のある髪もチャーミングよね。
不幸な境遇であるにもかかわらず素直で真面目な子、それに笑うとすごく可愛いの。
でも、アタシみたいなこんなオジサンじゃねぇ……。
あの子だって、同じ年頃の相手の方が良いに決まってる。
相手の幸せを考えるなら、アタシの気持ちには永遠に蓋をしたままの方がいいわ。
守り人の村まで一緒に旅をするんだもの、変に気まずくなって、みんなにも気を遣わせるくらいなら……。
「なーに黄昏てんのさー」
「……あら、メルちゃん」
メルちゃんはアタシの隣にモフっと座った……相変わらずのフワフワね、昨日のブラッシングのおかげかしら。
「ディディ、いい事教えてあげよっか」
「なに?」
「精霊は基本、人間に恋はしないんだよ」
「……知ってるわよ」
「でも、一度恋をしたら、絶対に浮気しない。還るまでその人の事だけを想い続けるよ。だから、たとえ自分の子どもであっても、愛情を注がないわけ」
「……メルちゃん、何が言いたいの?」
「半分でも精霊なら、振り向かせちゃえば一途だって事さー」
「……振り向いてすらくれないかもしれないのよ?」
「まー、今みたいに自分から背中向けてるんじゃ、永遠に無理だろうねー。いっそボクみたいに、好きな人に飛びついちゃえばいいのに」
「それはモフモフヒツジのメルちゃんだから、許されてるんでしょ?」
「嫌がる人もいるよー。でも好きな人に変に意地張るくらいなら、くっついた方が幸せだもん」
メルちゃんはそう言って、ぽふんと音を立てて椅子から降り、玄関のほうに歩いていく……買い出しに行っていたみんなが戻ってきたみたいね。
そして有言実行、メルちゃんは扉を開けたシャルムちゃんに飛びついて、ガッツリと甘えているわ。
恋愛とは違う感情だろうけど、シャルムちゃんにとってもメルちゃんは可愛い子なんでしょうね。
その様子を慣れたように見ているシエルちゃんとヴァニスちゃん、あの子たちの事は優しく見守ってあげたいわ。
……そして、その向こうにいる、あの子。
アタシが本当にメルちゃんみたいに飛びついたら、あの子を潰しちゃいそうだわ。
逆に飛びついて来てくれるのなら、いくらでも受け止める自信はあるけどねぇ……。
でも……そうね、確かに変に背中を向け続けるのはよくないわ。
……もしもいつか振り向いてくれた時に見たものが、アタシの背中じゃ寂しいものね。
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